オフィスBMの取材日誌 自動車系物書きのクルマとバイクと…

記者として、カメラマンとして 日々自動車&バイク関連を追いかける、クルマメディア業界の何でも屋・青山義明のブログです。

カテゴリ: 掲載記事(WEB Mr.BIKE)

「もう二度とバイクに乗ることは無い」とあきらめていた人たちに希望を与えている一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)の「パラモトライダー体験走行会」。2020年の初開催から丸3年、数多くのパラモトライダーが誕生し、公道再デビューを果たした者もいる。そして、その活動を経て、独自にバイクレースに出場することを決めた面々が登場した。
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ロードレース界のレジェンドである青木三兄弟の三男・治親が代表理事を務めるSSP(サイドスタンドプロジェクト)は、これまでの3年余りで数多くのパラモトライダーを誕生させてきた。パラモトライダーとは、バイク事故などで障がいを負ってしまったものの、このSSPの活動でバイク再デビューを果たした者たちを指す。SSPでは、障がいに合わせて運転操作を加工したバイクを用意し、ボランティアスタッフが車両を支えることで、その障がいをカバーし、バイクの楽しさを再び実感できる機会となるパラモトライダー体験走行会を月に一回ほどの頻度(冬季を除く)で提供している。

その体験走行会も数を重ね、バイクに再び触れてみる、から始まった参加者の中から「もっとバイクに乗りたい」というメンバーも増えてきている。そして話が進み、同じ青木三兄弟の次男・拓磨が主催する『Let’s レン耐!』(Let’sレンタバイク耐久レース)にチームを結成し、障がい者だけのチームが初挑戦した。
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『Let’s レン耐!』はレンタル方式のミニバイクレース。エイプ100~グロム125といったバイク本体はもちろん、レーシングスーツなどの装具も貸し出しが可能で、仲間を誘って気軽に参加できる耐久レースである。もちろんレース初心者向けの初心者講習会も同日に開催されており、まさにヘルメットと身体ひとつで参戦が可能なレースである。一年に51週末しかないのに、年間38戦も開催している驚異の開催数というのも特徴のひとつ。チームでなくても一人での参戦も可能なので、拓磨曰く「誘われたら断る理由がなかなか見つからない」というレースなのだ。

そこにフォーカスしてきたのが、SSPでライダーに復活した面々。過去に何度もSSPの体験走行会に参加し、2022年9月に開催されたSSPの一般公道ツーリング『やるぜ!箱根ターンパイク』にも参加してきた。今回のレン耐の参戦を前に8月には同じ群馬県のハルナモーターランドで開催の『ノブアツ杯ハルナミニバイクレース』(こちらは青木三兄弟の長男・宣篤が主催)に試し出場もして準備を重ねてきた。

そして迎えたのが12月18日(日)に開催されたレン耐の東日本第27戦。『ノブアツ杯』で経験もあるハルナのコースを舞台にした『RSタイチCUP Xmasレン耐ハルナ4時間耐久』である。参戦メンバーは、古谷 卓さん(脊髄Th.12損傷の完全麻痺)、丸野飛路志さん(右大腿切断)、まがり美和さん(右大腿切断)というパラモトライダー。そして、ここにレジェンドライダーである小林 大さんも加わったパラモトライダーチームとなる。小林 大さんといえば、1984年、85年の全日本GP250クラスのシリーズタイトルを獲得後、1987年にはWGP鈴鹿GPでも優勝し、味の素ホンダレーシングに所属しAJINOMOTO TERRAカラーのNSRでチームメイトの清水雅広と実力と人気を分け合う活躍を見せた。1989年に現役を引退後、ヘリコプターの事故により足に障がいを持っている。

そしてこの4名のライダーに、『パラモトライダー体験走行会』で常にパラモトライダーのサポートを行っているボランティアスタッフの2名がヘルパーとして参加。チーム名は、この面々を引き合わせたSSPから取って「チームSSP」となる。レン耐では基本的に車両はレンタルがメインとなるが、持ち込みも可能ということで、このチームSSPは独自にシフト操作をハンドル側でできる加工を施したグロムで参戦した。
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チームSSPが持ち込んだグロムは、障がいが異なる各ライダーが乗るため、操作する左ハンドル周りはレバーが2本にシフトスイッチと複雑な構造となる。また、各ライダーがこのレース参戦に向け、それぞれの障がいに合わせて工夫もしている。

当日は、雲は多いものの晴れ。前夜には雪が降り氷点下まで冷え込んだこともあってやはり陽が陰ると寒い一日となった。風が強く、時折その風の中に白いものが混じるような時間もあったが、雨に降られることなく4時間の耐久レースを終えることができた。この日のレン耐はクリスマスということで、仮装をすれば5周のプラスハンデがもらえるため、各チームが仮装をして参加したこともあって、ピットもコース上も華やかな一日となった。もちろんこのチームSSPもサンタの衣装を着て参戦した。

レン耐のスタートは、ホームストレートにマシンを並べ、その反対側からライダーが走り寄ってマシンに乗り込みスタートしていくル・マン式となっている。そのため、スタートライダーとなったSSPのまがりさんは先にマシンに乗車し、ヘルパーがライダーの代わりにマシンに走り寄って、他車のスタートを見届けてから、接触などのないようにライダーを送り出してレースはスタート。

ライダー交代は他のチームの邪魔にならないように、ピットの入り口側と出口側の広い場所を使って行われ、ヘルパーがバイクを受け取り、ピットロードを押して、出口側でライダーを乗せてスタートの補助も行う。
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レン耐ではさまざまなレギュレーションもあって、ライダー交代の際は、自分たちのピットまで走行して戻ってくるのではなく、事前のチェックポイントでバイクを降車して、ピット前は手押しで移動および乗り換えを行うというルールがある。しかしチームSSPは、チェックポイントの手前の広い場所でヘルパーが待ち構えライダーを下ろしたあと、ヘルパーがマシンを手押しで移動させ、ピットロード出口側で待つ次のライダーのところでスタンドをかけ次のライダーの乗車を手伝い、ピットアウトする車両の妨げにならないよう、ヘルパーが発進の手伝いをしながらレースを進めていく。
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今回のレン耐は路面温度が低かったこともあって、4時間のレース中に26回という多くの転倒を数えることとなった。が、チームSSPは、無事に無転倒のまま走り終えることができた。途中でシフトスイッチのボックスが緩んでしまうアクシデントなどがあったものの、4時間のレースで2スティントずつ乗り換えて、最終的には190周を走行してクラス16位でフィニッシュとなった。
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各上位入賞者以外にレン耐では毎回特別賞が用意されているが、この日の特別賞は「チームSSP」に贈られた。

今回、パラモトライダーのチームが参戦していることはあまり大きく説明があったわけではないが、レン耐参加者のマナーの良さと、各パラモトライダーが無理をせずに走行を重ねたこともあって、無事にレースを終えることができた。今回参加した4名がともに再度レン耐への参戦を希望しており、近いうちにまたレン耐の場で、健常者と障がい者の隔たりのない参戦が実現するのだろう。
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まがり美和さん。「先々月、富士スピードウェイで一般の人と一緒に走行した時はすごく緊張しましたが、今回は他の人と一緒にレースをしたんですが、負けたくないって思いで無事にレースは出来ました。が悔しいって思うところもあって、次に向けていろいろ改良して自分も進化させてもう一度参戦したいです」
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古谷 卓さん。「障がい者だけのチームで初のレン耐参戦でしたが、無転倒・無接触で完走できてよかったですし、とても楽しめました。本当に『大成功!』のひと言に尽きると思います。次はもっと多くの仲間を誘って、みんなで和気藹藹って参戦を楽しめたらいいなぁと思っています」
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丸野飛路志さん。「事故をしてからずっとこういうものに出てみたいと思っていました。それでこのSSPの活動を機に参戦計画を立て、一年かかりましたがここまで来れて、非常に良かったと思います。今回手伝ってもらった小宮さん、加藤さん、そしてこの参戦を調整してくれた拓磨さんにも感謝しています。ありがとうございました」
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小林 大さん。「ひさびさにレースというモノに出ることができて、SSPの皆さんと一緒に走れたのはすごく有意義なことだと思いますし、大きなトラブルもなく走り切ることができてよかったですね。今回の参戦だけにとどまらず、またこれからも楽しみたいと思っています」

2022年9月11日(日)、神奈川県にある有料道路・アネスト岩田ターンパイク箱根で、二つのイベントが行われた。『モトライダースフェスタin箱根』と『やるぜ!! 箱根ターンパイク2022』である。2つのイベントでターンパイクを借り切ったわけだが、ここでは『やるぜ!! 箱根ターンパイク2022』の様子を紹介しよう。
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当日は、パラモトライダー14名にそのツーリング仲間が76名、付き添い10名が参加。さらにこのクラウドファンディングに出資協力した80名が見学にやってきた。ちなみにこの日のボランティアスタッフは150名にも上った。

ついに箱根にSSPがやってきた!
夢にも思わなかった夢が実現した
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『やるぜ!!箱根ターンパイク2022』を主催したのは、一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)である。このSSPは、ロードレース界のレジェンドでもある青木三兄弟の、三男・治親と長男・宣篤が立ち上げた法人。1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされた元WGPライダーで、この三兄弟の次男・拓磨をもう一度バイクに乗せようという企画からスタートし、実際に拓磨がバイクに乗るようになった。そして、「この感動をもっと一般のライダーにも」とバイク事故などによってバイクを降りることになってしまった方を対象とし、『パラモトライダー体験走行会』なるイベントを2020年6月から積極的に開催している。
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好天に恵まれ、Uターン場所では富士山も顔を出してくれた。またターンパイク各所からは相模湾が見渡せ、まさにツーリングとなった。
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各パラモトライダーがそれぞれに友人を招待。「昔一緒に走っていたバイク仲間らと再び一緒に走れる機会を」という配慮の下、大勢のライダーがパラモトライダーの公道再デビューを祝った。


『パラモトライダー体験走行会』は、サーキットや自動車学校といったクローズのコースを使用して、“バイクに再び乗ってみる”という機会を多くの障がい者に提供している。この走行会に使用する車両は、下半身での操作ができない拓磨のライディングにも使用したものと同じ、シフト操作を手元で行なえるハンドドライブユニットを搭載している。下半身は、ブーツをビンディングでステップに固定し、太腿部をベルトで締めて固定させる。バイクの動き出しと停止のタイミングでボランティアスタッフが支えることによってバイクの乗車体験が可能となる。当初は拓磨と同じ脊椎損傷による下半身麻痺や足の切断といった障がい者を対象としていたが、現在では視覚障がいなども対象としており、それぞれの障がいに合わせた車両をセットアップし、実際の走行に使用し、厳冬期を除き、毎月のようにこの走行会を開催している。
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バイクへの移乗、そして発進&停止の際にボランティアスタッフがサポートする。今回ライディングギアは各個人が持ち込むこととなったため、ステップへの足の固定については各個人のシューズをプレートに括り付ける形となった。
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2020年からこのパラモトライダー体験走行会を開催しているが、その最終的な目標は、“実際の公道を使用して、パラモトライダーたちと一緒にバイクでツーリングをする”というものであった。神奈川県にある『アネスト岩田 ターンパイク箱根』なら、一般公道でありながらも占有が可能。これを貸し切りにしてしまえば、事故を機に2輪免許を返納してしまっているパラモトライダーでもツーリングが可能になる。できれば10年以内、2030年までには実施したいというのが、スタッフのSSP設立当初からの夢であった。

そこに、今回『モトライダースフェスタ』と合同で箱根ターンパイクを借りるという話が立ち上がり、急遽計画を8年前倒しし、2022年9月11日(日)にパラモトライダー一般公道走行会『やるぜ!! 箱根ターンパイク2022』の実施に向けてクラウドファンディングを立ち上げ、この日の開催に至ったのである。

参加パラモトライダーは、SSP側から招待された14名となった。いずれも脊椎損傷および大腿切断の障がいを持つ。今回はツーリングをするということで、通常の走行会で用意するレーシングスーツのレンタルは無し。パラモトライダーは自身のライディングギアを持ち込んで、自分の装備でツーリングすることになる。ステップへの固定については、通常は加工したライディングブーツを使用してビンディングで取り付けていたが、今回はビンディング加工したプレートを各自のシューズに取り付ける形で対応した。各パラモトライダーはそれぞれ一人につき9名まで仲間と一緒にツーリングするということも可能となっており、各参加者がそれぞれ友人を誘って一緒に箱根に行けるという嬉しい企画となっている。
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「モトライダースフェスタ」のターンパイク走行イベントが終了した正午過ぎから順番にパラモトライダーがスタートしていき、日が大きく傾いた夕方5時には、全14名のパラモトライダーが無事に走行を終えた。
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先導役を買って出てくれたのは、地元小田原警察署。会場で参加者やスタッフとの意見交換も行われた。そして2台の白バイ隊員がこのツーリングに参加し、10グループの先導を務めてくれた。

パラモトライダーは、箱根ターンパイクの小田原料金所で、バイクに移乗し、ボランティアスタッフが走り出しと停止時にサポートに入る。走り出してしまえば、そのまま大観山展望台まで駆け上がり、今回特別に用意されたUターン路を使用してまた小田原料金所まで戻ってくるというもの。残念ながら途中で停止をすることはできない。パラモトライダーの前後には、先導車と、緊急時用にタンデムでサポートスタッフが乗り込んだ追走車2台がつき、その後ろに友人たちが一緒に走行することになる。サインハウスのバイク用インカム「B+com」で先導車と追走車との会話をしながら走行ができるようになっている。その走行距離は全長26kmにもおよぶ。そのコース上では、この日集まった友人ライダーズとボランティアスタッフが沿道からこのパラモトライダーたちに声援を送る。好天に恵まれたこの日、スタート&ゴール地点の小田原はまだ残暑が厳しかったが、さすがに大観山展望台近くは涼しく、途中で富士山の姿も相模湾もしっかり見渡せる、まさにツーリング日和となった。

ヤマハの電動バイクといえば、2002年に発売した量産車初の電動二輪車「Passol(パッソル)」以後、EC-02、EC-03、さらに某TV番組で有名になったE-Vinoと、50ccクラスの車両をこれまでリリースしてきた。そんなヤマハが新たに導入する125ccクラス(原付二種クラス)相当のEVバイク「E01」のメディア向け試乗会を行った。このバイクは、EVの価値の確認といったところの実証実験モデルという形式を取り、月々2万円(税込)のリース料で3カ月間使える車両が7月に100台リリースされる予定だ。
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全世界500台限定で、6つの国と地域で実証実験を行うモデルとして登場するのは、2019年の東京モーターショーに登場した参考出展車「E01」の製品化モデルだ。外観はほぼこの参考出展車両のままといった感じになる。といってもこのモデル、「市場投入予定はない」という一台である。
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このモデルの発表会にあたり、開発陣から最初に説明があったのが、「EVの課題について」という点。つまり「航続距離と充電方法(バッテリー容量)」という相反する2点の落としどころの問題であった。これは2輪だけでなく4輪業界でも語られていることだが、航続距離を取ればバッテリーは大きくする必要があり、それは重量増につながる。しかし、日々の使用環境のミニマムサイズのバッテリー量にすれば軽量にすることができ、より効率的に車両を運用することができる。さすがに4輪ではバッテリーの持ち歩きというイメージはないが、2輪車の場合は、バッテリー量を少なくすればそれを取り外して自宅などで充電が可能となる。
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これまでヤマハとしては50ccクラスのEVで、バッテリー交換の脱着式(PassolやEC-02、E-Vino)も固定式(EC-03)も実際に市場にリリースしてきた。またEVコンソーシアムのGachaco(ガチャコ)への参画で交換式バッテリーの利用についても進めている。今回は125ccクラスというスペックから、それらより大容量のバッテリー(持ち運びが難しい重量のため固定式バッテリーとなる)を搭載することとし、このEVで、原付二種クラスEVとその充電インフラといった市場受容性とニーズを探ることとし、日本以外に、ヨーロッパ圏内、台湾、タイ、マレーシア、インドネシアといった6つの地域で実証実験を行うという。
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ヤマハの市販内燃機関モデルであるNMAX125とほぼ同サイズの車体は、全長1930×全幅740×全高1230mmとなり、ホイールベースは1380mm。最低地上高は140mmでシート高は755mmだ。バッテリーを装着しての車両重量は158kgで、最小回転半径は2.1mという。

車両は床下にバッテリー、その後ろにモーターが配置され、パワーユニットが一直線に並ぶレイアウト。重量も大きさもある容量4.9kWhのリチウムイオンバッテリーをまたぐように乗車する。バッテリー内部の構造や形状については一切公開されていない。ただし、日本国内で組み立てるとしている。

ヤマハモーターエレクトロニクスの交流同期モーター(高回転型空冷永久磁石埋込型同期モーター)は8.1kW/30N・mを発揮する。モーターの巻き線に平角のものを採用する等、業界最高レベルの出力やトルク密度、高効率化を実現したという。その出力をベルトドライブで駆動する。このベルトドライブについては、静粛性、そしてチェーンのようなオイル臭さのイメージを排除するというEVらしさを強調するという点もある。
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今回の実証実験の125ccクラスの車両というのは、実証実験を実施する国はもちろん、全世界で需要のあるボリュームゾーンであり、使われ方も実に多様で、環境問題についてもその規模からして大きく作用するという見方がある。ただ様々な使われ方がある、ということで、目標としたのが、航続距離100km、最高速度100km/hというところであって、このE01は航続距離104km(PWRモード)、最高速度100km/hを実現した。

ただ、ヤマハ発動機としてはこれがすなわちEV化への一台というイメージでもない。カーボンニュートラルを目指すとはしているものの、イコールEV化とはしていないという。EVはあくまで選択肢のひとつであり、バイオ燃料であったり、水素であったり、内燃機関のさらなる進化もしっかり研究をしているところだという。
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そのバッテリーへの充電方法は、「急速充電器」、「普通充電器」、「ポータブル充電器」の3種の充電器に対応するとしている。急速充電は、約1時間の充電で、空の状態から90%の充電が可能(バッテリー保護のため、残量90%で充電停止となる)。普通充電は200V電源から取るタイプで、約5時間の充電で、空から100%の充電が可能。ポータブル充電器は車両に標準装備されており、シート下に収納が可能。こちらは約14時間の充電で100%の充電が可能となる。どの充電方法もDC(直流)充電で、フロントカウル中央にある充電コンセントを使用する。

この充電コンセントを見てみると、国内外で使用されている充電コンセントとは異なる形状をしていることに気が付く。充電プラグもサイズ的には国内でJ1772と呼ばれているAC普通充電のプラグによく似ており、プラグだけ見てみると、それよりも軽量に感じられた。詳しく話を聞くと、これはヤマハが提案している充電規格なのだという。日本国内では規格として採用されていないため正式な名称もないのでヤマハ独自規格としか言いようがない。
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国内で使用できるDC充電となると、高速道路のPAやSAに設置されているCHAdeMO(チャデモ)式の充電器となるのだが、バッテリーの容量的にチャデモ機は大きすぎ(さらにチャデモの規格はどんどん大容量化していている)、ごっついチャデモの充電プラグも含め、この小型バイクのバッテリー充電には適していないという。そのため、ヤマハはこれら小型EVに向けた充電規格を提案。それが今回搭載されたこのヤマハの規格となるのだ。ちなみに台湾ではこの規格がすでに採用されているので、急速充電で使用しているものは台湾CNS規格となる。

その車両は、ヘッドランプ、ポジションランプ、フラッシャーランプ、テール&ストップランプなど、灯火類の全てにLED灯を採用。ホワイトのボディも若干パールがかっており、アクセントとしてヤマハのEVのアクセントカラーであるシアンブルー色とも相まって、いかにも電動バイクという印象が強い。
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実際に試乗をしてみた。足着き性もまたぐ感覚も違和感はない。スマートキーシステムを搭載しているので、カギを物理的に差し込む必要はない。センターにあるスイッチを押して起動、そして回転させて、右ハンドルのセルスイッチ位置にあるスタートボタンを押すと走行準備完了を表すメーター上部のグリーンのランプが点灯する。

メーターは縦型の大きなもの。視認性はよいのだろうが、せっかくなら、EVの先進性を表現することも考えてこれはフル液晶パネルとしたいところ。特に今回は実証実験ということもあって、3GのSIMとGPSを内蔵した「CCU(Communication Control Unit)」を搭載していることが発表されている。実際にデータのやり取りをできるのなら、もっと車両の情報を見たいというのが本音。ただ、それについては、EVの利用に関するデータ取りをする上で、内燃機関車にも搭載できるEVとは関係のない、つまり本質ではない部分の評価軸を増やしたくないということでの不採用だったらしい。ちなみにこのCCUにより、Webアプリケーションにアクセスすることで、走行ログ、バッテリー残量、最終駐車位置などを確認できるとしている。
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走り出してやはり驚くのはその静かさ。振動もこのサイズの内燃機関車はそれなりにあるものだが、このE01に乗ったら、内燃機関車はちょっと嫌になるくらい、というイメージだ。加速が良いEVならではの走りで走行に不足はない。ちなみに車両の出力は、モーターのパワーを最大限に発揮する「PWR(パワーモード)」、そして通常使用の「STD(標準モード)」、さらに長距離を走行するためエネルギー消費を抑え最高速約60km/hに制限する「ECO(エコモード)」、3つのモードを備えている。また後退は2つのボタン同時押しにより時速1km/hで可能となっている。
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車両減速時には回生ブレーキも備えている。「エンジンブレーキの感覚を再現した回生ブレーキ」ということで内燃機関車からの乗り換えを意識した回生の入れ方で、乗り方としては自然なのだが、いろいろなEVを乗ってきた身からすると、若干不満が残る、という感じだ。モード切替ボタンがハンドル横に設置されているのだから、そこで強い回生を取れる仕組みを入れ込んでもらってもよいのではないか、とも思う。
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ユーティリティの部分では、シート下トランクは約23Lの容量を持つ。ポータブル充電器はこのトランクの上部側に収納ができるようになっている。トランク自体はヘルメットも収納が可能なサイズだが、ポータブル充電器を積載している場合ヘルメットは収納できない。またフロントカウル内側には2か所のフロントトランクも用意されており、右側にはDC12V電源が取れるようにもなっている。

ちなみにE01は販売されることはない。ただ、このモデルの進化型が登場する可能性はあり、である。実証実験は、7月から3カ月間日本国内で100台規模での実施となる。延長や買取はない。ユーザーはヤマハ発動機と直接契約を結び、車両は最寄りのYSPで引き取りをすることになる。月々のリース料として税込み2万円が必要となるが、その2万円の中に保険料なども含まれる。リアボックスSETは月額1000円の有償オプションとなる。

また、充電器は普通の100V家庭用コンセントから電源を取るポータブル充電器が標準装備。200Vの普通充電器は月額1000円のオプション設定となる。ちなみにこの普通充電器はEV用に設置されている平型200V電源から電源を取るタイプであるため、平型200V電源がない家庭や駐車場ではその設置及び撤去費用がユーザー負担となってしまう(設置場所の状況にもよるが工事費用は約13万円ほどとなる見込み)。急速充電器は国内に5~10基の設置を検討しているが現在のところその場所は発表されていない。

実証実験の申し込みについては5月9日から22日までの2週間が応募期間となる。国内100名のみ。全世界でも500名しか参加できないこの実証実験、試してみる価値は、あると思う。

エネルギー関連業界関係者向けの総合展示会である「第18回 スマートエネルギーWeek【春】」が3月16日(水)~18日(金)の3日間、東京ビッグサイト(東展示棟)で開催となった。この「スマートエネルギーWeek2022」は7つの展示会で構成されているが、そのうちのひとつ、「第12回スマートグリッドEXPO[春]」にホンダが出展した。
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今回、このスマートグリッド展に出展したホンダのブースには、ビジネス用電動二輪車シリーズの3台、「ベンリィ e:」、「ジャイロ e:」、「ジャイロ キャノピー e:」が並んだ。といってもこのブースのテーマは電動ビジネスバイクではない。その原動力を担う「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック)」の展示であった。
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モバイルパワーパックは電圧48Vの充電池。全高298mm×全幅177.3mm×奥行156.3mmのサイズで、重量は約10㎏。バッテリー容量は1.3kWh、1個当たりのゼロから満充電までの充電時間は約5時間となる。ちなみに電動バイクでは2個を直列に接続させた96V系のシステムで駆動する。

この「モバイルパワーパックの活用拡大」を実際に目に見える形でブースが構成されており、各種参考出品モデルがブース内を埋めることとなった。
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ビジネスバイクとともに並んでいたのが、マイクロショベルPC01と名付けられた試作車。そのボディにもあるように建機メーカー、コマツ(小松製作所)が手掛けた小型のショベルカー。その電動モデルのバッテリーとしてモバイルパワーパックを2つ使用したモデルとなっている。

他にも、屋外パワーソースを提供しているデンヨーのスプリットライト投光機や、デンソーのトマト自動収穫ロボット「FARO」も実機が登場し、実際の使用イメージも想起させるものとなった。
Honda Power Storage e:
そして、定置型の家庭用の蓄電池として、モバイルパワーパック4基を収納できる「Honda Power Storage e: Concept」も展示された。太陽光パネルで発電した電力のバッファとしてモバイルパワーパックも活用できるとしている。使用するモバイルパワーパックも、劣化しモビリティ用途に適さなくなったものの二次利用としても検討できるのではないか、としている。
Honda Power Pod e:
最近、アウトドアシーンで活用が採り上げられることの多いモバイル電源というような使用イメージの試作機も登場。この「Honda Power Pod e: Prototype」はモバイルパワーパックを1本のみ使用したモデルとなっており、通常の100Vコンセント(口)とUSBのアウトプットを持つ。

このモバイルパワーパック、今後もさらに利用拡大を促進していくとしている。

青木拓磨のライダー復帰計画を機に、障がいを負ってしまった元ライダーに「再びオートバイを運転する」“夢”と“希望”を応援する一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)を青木宣篤・治親兄弟が立ち上げた。
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そして実際に障がいを持つ人に、バイクを楽しむ機会をと、パラモトライダー体験走行会を始めたのが6月のこと。ハンドシステムを搭載したバイク、そしてヘルメットからツナギまでライディングギアをすべて用意し、サーキットというクローズの空間を使用しての走行イベントである。

6月のパラモトライダー体験走行会初開催では、過去にバイクレースの経験もある2名がこれに参加。そのひと月後となる、7月には場所を筑波サーキットに移して2回目の体験走行会を開催。この2回目の会場では、雨にもかかわらず、パラモトライダー初体験2名が参加し、会場には障がいを持つ7名が見学参加した。
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そして、その筑波での見学者のうちの2名を集めての3回目のパラモトライダー体験走行会が、8月21日(金)、第一回目と同じ千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。
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今回は、第一回目から毎回参加している野口忠さんが継続参加。それ以外の新規参加者は、1名がその野口さんの甥にあたる野口輝さん(33歳)。一般道でバイク乗車時にクルマの飛び出しによる事故で、脊椎損傷(腰椎L2)で2年前から車いす生活となっている。もう一人の、前田高豪さん(49歳)は「脳動静脈奇形」という病名で足の自由が効かないという(足の感覚はある)。趣味の二輪レース中にサーキットで発症し、以後25年にわたって車いす生活となっている。ともに第2回の筑波での体験会に来場し、今回の初参加につながった。
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ちなみに、青木拓磨選手は、前週行われたドイツ・ベルリンでジャガーの電気自動車レースに参戦後、帰国はしているものの2週間の自主隔離中ということで、今回は残念ながら不参加。
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この日の袖ケ浦周辺は、朝からすでに気温が上昇し、午後にはさらに陽射しがきつくなり、厳しい残暑の一日となった。この天候下では、健常者でも熱中症へのリスクが高くなるが、脊椎損傷を負っている方は体温調節障がいもあるのでさらに注意が必要。
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そこで、今回SSPでは、リフトゲート付きの冷蔵トラックのレンタカーを会場に持ち込んだ。関係者用休憩スペースとして、走行を終えた参加者やスタッフが時折トラックに入って身体を涼ませ体調を整えていた。
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初めての体験走行を終えた野口輝さんは満面の笑みでピットへ戻ってきた。やはりブランクは2年とほかの参加者よりも短かったこともあり、すぐにバイクに慣れた感じだ。公道では中型の400に乗っていたが、今回初めてビッグバイクで、「大きいバイクはすごく乗りやすかった」とコメント。
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前田さんは「25年ぶりのバイクでした。目線が下がり気味だったり、乗っていた時の感覚をけっこう忘れていました。でも慣れれば乗れると思います。ちょうど今教習所に通い始めたようなもの。これからも走りたい」とコメントしてくれた。
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このパラモトライダー体験走行会は順調に月に一回の開催となっている。が、今後の予定は未定という状況。あくまで開催は参加希望者とサーキットとの調整によるもので開催をして行くという。非常に順調に開催をしているようにみえるが、まだ、試乗車両、スタッフの数もあって、制限を掛けざるを得ない状況だ。
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もちろん、参加者にしても、本来なら、乗ってみたいという意思を持って会場まで足を運べば、そのままバイクに乗れるのが一番なのだが、それも現在のところできない。というのも、帯同する理学療法士の先生が、参加希望者の身体の状態を確認し、走行の可否を判断し、スタッフともその対応を含めた情報共有をしたうえで実際に受け入れるという形となっている、からだ。

しかし、それでもこの日も会場に2名の見学者がやってきた。少しずつではあるが、着実にパラモトライダーの輪は広がってきている。これからもこの広がりに期待したい。

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