オフィスBMの取材日誌 自動車系物書きのクルマとバイクと…

記者として、カメラマンとして 日々自動車&バイク関連を追いかける、クルマメディア業界の何でも屋・青山義明のブログです。

2020年09月

レーシングライダーとして世界で活躍した青木三兄弟の長男・青木宣篤選手と3男・治親選手が立ち上げた一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)は、事故などで障がいを抱えてしまって、2輪車を諦めた人に再びオートバイに乗ってもらい、オートバイに乗る趣味を一緒に楽しんで行けるように応援する非営利支援団体で、今年6月から一般の障がい者を対象とした体験走行会を開催している。
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青木三兄弟の次男、青木拓磨選手は、1998年に2輪GPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされて4輪ドライバーに転向している。その拓磨選手に再びバイクに乗ってもらおうと「Takuma Ride Again」と題したプロジェクトを昨年スタートさせている、宣篤&治親の2人が始めた企画がこのSSPの活動につながっている。
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このパラモトライダー体験走行会では、ハンドシステムなど障がいに合わせて乗車を可能とする補助システムを搭載したバイク、そしてヘルメットからツナギまでライディングギアをすべて用意。開催場所は、一方通行で事故の危険性の低いクローズドの空間であるサーキットを使用する。そして、自立しないバイクを支える数多くのボランティアスタッフで構成される。

6月から毎月開催されているこの体験走行会では、毎回見学者を受け入れており、今回の参加者は前回の8月の走行会で見学に来た2名が、9月16日(水)に千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで開催となった4回目のパラモトライダー体験走行会参加した。
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その走行会は、まずバイクに慣れるために、転倒防止用の補助輪の付いたバイクを使用して直線走行。ここできちんと走行ができることを確認した後、コースでの走行へと移行する。今回は、前回転倒者が出たことから、新たに後輪部分に補助輪を装着した車両を新作。さらにこれまで使用していた補助輪付き車両も、補助輪を新型にし、強度、安定性、操作性の向上を図った。さらにこれらの補助輪付き車両には遠隔でバイクのエンジンを停止ができるように緊急停止リモコンも用意。
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今回の2名の参加者は、渡邉友章さんと川口めぐみさん。両名ともバイクでツーリング中の事故で、渡邉さんは腰椎(L1)の圧迫骨折で車いす生活に(2019年8月)。川口さんは胸椎(T12)を損傷し、腰から下がマヒ(不全麻痺)となっている(2016年12月)。

今回もまずは朝会場に入った参加者とSSP専属の理学療法士との体調確認から始まり、まずは補助輪付きの車両で走行練習を行うのだが、今回参加の2名は、ここから、バイクをまっすぐ走らせることができず苦戦。渡邉さんが「1年前までバイクに乗っていたので復帰は簡単だろうとナメてましたが、いざ乗ってみると、自分の中のセンサーが無くなっていて全然乗れなくてびっくりしました」というとおり、自身の身体のちょっとした傾きが、バイクの動きに連動してしまうのだ。同様に川口さんも「乗れると思っていたのに、それができなくて、そのギャップが悔しくて落ち込んでいました」とコメントしてくれた。
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それでもセッション終盤になって、同じ車いす生活を余儀なくされていながらもバイクを乗りこなしている拓磨選手から「頭を逆方向に振ってバランスを取れば大丈夫」とアドバイス。これで2名とものライディングが大きく変わり、バランスのとれた走りができるようになった。
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残念ながら、さすがにサーキット走行をするまでには至らず、本人のライドによる本コースでの走行は出来ないまま終了。ただ、代わりに、この体験走行会に参加している今野由寛選手のタンデムシートでコースを周回し、この日の走行会を終了した。この日も会場に2名の見学者がやってきており、次回の開催も調整中で10月中には5回目の体験走行会が開催となる予定。少しずつではあるが、着実にパラモトライダーの輪は広がってきている。これからもこの広がりに期待したい。

9月12日(土)、千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで、日本電気自動車レース協会(JEVRA)主催の「全日本 袖ケ浦EV55kmレース」が開催されました。このJEVRAシリーズは今季7戦を予定している電動駆動車のみで行われるレースシリーズです。
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今回は2019-2020シーズンの「Jaguar I-PACE eTROPHY」に参戦していた青木拓磨選手が、EVレースに初挑戦をするということで注目を集める一戦となりました。

EV-1(市販車クラス:モーター最大出力201kW以上)クラスにテスラ3台と、その青木選手が持ち込んだジャガー・アイペイスの計4台が参戦、そしてEV-2(市販車クラス:モーター最大出力151kW以上201kW未満)クラスにリーフe+、そして通常のリーフが参戦するEV-3クラス、EV-R(市販車クラス:レンジエクステンダー/発電をエンジンで行う車両)クラスへ2台のノートeパワーと、コンバートEV(EV-Cクラス)に2台と、計11台のレースとなりました。

ジャガーeトロフィに参戦するジャガー・アイペイスのカップカーは、90kWh 容量の駆動バッテリーや最大出力294kWとなる2基のモーターによる4輪駆動といった基本的なところは市販車と変わらないものの、内装をはぎ取り、ロールケージを組み込むなど市販車をベースとしながらもピュアなレースマシンとして仕立てられています。
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一方、今回青木選手が持ち込んだのは日本国内で市販されているモデルそのもの。このEVレースを見据えて、運転席にバケットシートを入れており、タイヤもADVAN Sport V105(サイズは255/45R20)を履かせています。また青木選手の運転のため、イタリアのグイドシンプレックス社のハンドコントロールシステムを組んでいますが、基本的にはそこまで。車重もノーマルの2208㎏を大きく下回ることはなさそうです。

今回のシリーズ第5戦は、開幕4連勝中のテスラモデル3を駆る地頭所光選手(#1 TAISAN 東大 UP TESLA 3/EV-1クラス)が発熱のためまさかの欠席。直前にドライバー変更願いが出され、その1号車は急遽、井土智洋選手が乗ることとなりました。
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井土選手はこのJEVRAシリーズ創成期とも言える2011年から2013年までテスラロードスターで参戦していた選手で、2011年4戦中3勝、2012年5戦中4勝、2013年はシリーズ6戦中出場5戦5勝とこれまで3度のタイトルと12勝を挙げています。

また、このシリーズ発足当初から参戦していたチームタイサンの千葉泰常監督に「勝てないから辞める」と言わしめ、JEVRAシリーズから一度追いやった、その張本人でもあります。まさに「昔の敵は今日の友」としてチームタイサンの車両を任されたのです。ただ、参戦のオファーが前日夕方で、モデル3には触ったこともなく、このレースの予選が初搭乗ということで若干不安が残ります。
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一方、今季常に地頭所選手の後塵を拝し、4戦連続2位という、同じテスラモデル3に乗るTAKAさん選手(#33 適当LifeアトリエModel3)にとっては、モデル3初乗りの選手に負けるわけにはいきません。

「雨が強くなると、レース経験の差が出ちゃいますが、雨にならなければ」と初優勝に向けて気合いを入れます。

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また、これまで開幕戦からテスラモデルSで参戦してきた千葉栄二選手(#0 TAISAN UP TESLA 3)もようやくモデル3がやってきた、とついに車両をモデル3に変更して、参戦となりました。こちらはまだパーツ類が間に合わなかった、ということで、今回はタイヤ交換とカラーリングのみの参戦となりましたが、雨が降れば勝機はある、とガチンコの3台の対決が予想される展開です。

そして迎えた予選セッション。この日は基本雨の予報でした。この予選セッションでは雨は上がっていましたが、路面は乾く気配がありません。このセッションに真っ先にコースインしたのは青木拓磨選手(#24 JAGUAR i-PACE 横浜ゴム)でした。しかし、路面状況の改善を期待して一旦コースから離脱。セッション後半になって再びコースインしアタックを行ったものの、他車に引っかかって大きくタイムアップを果たせぬまま、ベストタイム1分23秒016というタイムでした。

この予選セッションでベストタイムを出したのは、TAKAさんでした。1分15秒683でポールポジションを獲得。2番手には井土選手でタイムは1分16秒106。そして3番手には千葉選手(1分19秒020)が入り、青木選手はそれに続く4番手へと順当なグリッドが当てられた形となりました。

そして予選終了から5時間弱、各車しっかりと充電を終えてグリッドに整列。路面状況確認のためのフォーメーションラップを挟み、午後1時24分、レース距離55km、23周によって争われるJEVRA第5戦がスタートしました。

1列目アウト側のポールポジションからスタートしたTAKAさんがホールショットを奪いましたが、オープニングラップを制したのは井土選手で、レース序盤は井土選手がリードする展開となりました。一方同じテスラモデル3で今回初参戦となる千葉選手は、スタート待ちのタイミングでシフトモードが「P」に戻ってしまい(Dレンジに入れても数秒間アクセルを開けない場合、安全のためシフトが自動的にPに変わるようになっています)、スタートで大きく出遅れることとなってしまいました。
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トップを行く2台は激しいバトルを繰り広げながら常に前を伺いながらの展開。そしてついに7周目にTAKAさんが井土選手を捉えトップに浮上。しかし、そのまま2台のバトルは1分21~22秒のラップタイムで周回を重ね、バックマーカーをひたすら処理しながらもその差は3秒と広がることはありませんでした。

しかし、20周を過ぎ、井土選手はその追撃の手を緩めて、ようやくTAKAさん選手の初優勝が決定しました。そしてこの2台に続き、スタートで大きく出遅れた千葉選手が1ラップダウンされながらも無事に3位を獲得しました。
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注目の青木選手は、圧倒的な加速力を持つアイペイスでスタートから好調に飛ばしていったのですが、すぐに制御モードに入ったこともあり、後方から迫ってきたレーサー鹿島選手(#88 東洋電産・LEAFe+)のリーフに徐々にその差を詰められていく展開。さすがに2トン越えの重量級マシンでコーナーでは詰められるものの直線で引き離しと、テール・トゥ・ノーズの4番手争いを制して4位でフィニッシュしました。
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レースを終え、初優勝を果たしたTAKAさんは「地頭所選手不在で、タナボタと言われるかもしれませんが、勝ちは勝ちですので素直に喜びたいと思います。次はちゃんと地頭所選手とバトルして勝てるよう頑張りたい」とコメント。

2位の井土選手は「人間がクルマに慣れるのに時間が掛かっちゃいました。また雨がひどくなると思って選んだタイヤでしたが、予想通り事が運ばず惨敗でした」。3位の千葉選手は「今回はシェイクダウン状態でしたが、次回はクルマを完璧な状態に仕上げてレースをリードして優勝したいです」とコメントしてくれました。

表彰台をまたしてもモデル3が独占することとなってしまいました。しばらくはモデル3の天下が続きそうです。続くJEVRAシリーズ第6戦は、10月4日(日)に筑波サーキットで60kmのレースとなります。

重量級の市販仕様車でサーキットを激走
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ジャガーの電気自動車「I-PACE(アイペイス)」を使用したワンメイク・レース「JAGUAR I-PACE eTROPHY(eトロフィー)」の2019-2020シーズンへの参戦を果たし、その挑戦を終えた青木拓磨選手が、9月12日(土)、国内のEVレースシリーズであるJEVRAシリーズ第5戦にスポット参戦しました。

「eトロフィー」で使う車両は、バッテリーやモーターなどは市販車と同じですが、ジャガーSVO(Special Vehicle Oparations)によるチューニングが施されているワンメイク専用車両です。今回はさすがにそのワンメイク車両を持ち込むわけではなく、青木選手が参戦するのは、普通に販売されている市販車と全く同じモデルとなります。これは青木選手が電気自動車への理解を進めることと、eトロフィー参戦に向けて車両感覚を確認するために、国内で現在使用してきた車両です。
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ジャガー・アイペイスは全長4682×全幅2011×全高1565mmというサイズです。駆動用バッテリーは90kWhを積み、モーターは前後で2基搭載し4輪で駆動します。モーター出力が294kW(400PS)となるため、JEVRAの参戦クラス分けでは、テスラモデル3などシリーズ最強モデルが居並ぶEV-1クラス(モーター出力201kW以上)へと組み入れられることになります。

ただし、いかんせん車両車重が2208㎏とまさにヘビー級となっているため、レースには不利と言わざるを得ません。青木選手はこのアイペイスのドライバーズシートのみBRIDEのバケットシートに入れ替え、イタリアのグイドシンプレックス社のハンドコントロールシステムを組み込んでいます。そしてタイヤはヨコハマのADVANスポーツの最新モデルとなるADVAN Sport V105(255/45R20)を履いています。

青木選手は、元々は2輪レーサーとして国内外で活躍をしていました。1997年に世界最高峰のロードレース世界選手権(WGP)にフル参戦を開始し、戦闘力の劣るマシンを駆ってランキング5位を獲得。チャンピオン獲得を目指し行っていた1998年の開幕前のテストでの事故で下半身不随となり、それ以後、活動のフィールドを4輪レースの世界に移し、現在は積極的に車いすレーサーとして活動を展開しています。
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今回青木選手が参戦することとなったJEVRAシリーズは、全日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催する電動モーター駆動車のみで行われるレースで、現在11年目のシーズンとなっています。これまで市販車はもちろん、実証実験に使用された少数生産の実験車両などさまざまな電動車両が参戦しています。このジャガー・アイペイスもちょうど一年前の2019JEVRAシリーズ第4戦に参戦(ドライバーは菰田潔氏で、予選は2位、決勝でもテスラモデルSに続く2位を獲得)しています。

とはいえ、今シーズン圧倒的な強さを見せているテスラモデル3は昨年はまだ不在でした。はたして、モデル3と同じクラスで、青木選手がどんな走りを見せてくれるのかが、今回のレースにおける注目点のひとつです。

2018年4月、強風で倒れた案内板の下敷きとなり、脊髄損傷により車いす生活を余儀なくされながらも、それまでと同様に地下アイドル「仮面女子」として活動を続けている、猪狩ともかさんが、千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで、健常者・障がい者が分け隔てなくサーキット走行を楽しもうという趣旨のもと開催されている「HDRS」に参加した。
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「HDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)」は、車イスレーサーの青木拓磨選手が障がい者でもサーキット走行を楽しめる機会を、と進めているプロジェクトで、2011年から始めている活動のひとつ。年に数回、この袖ケ浦のサーキットを中心に、各地のサーキットで開催をしているもの。
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青木拓磨選手は、1998年に2輪GPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされて4輪ドライバーに転向している。その4輪レーサーへの転身の際の経験をもとに、このスクールを開講している。
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レーシングスクールと銘打っているが、もちろんサーキットでの走行、そしてタイムアップなどを伝えるのは前提。そのレースに向けたノウハウとは、もちろんだが、障がい者のドライビングスクールという面も大いにあって、それぞれの身体の状況を確認しながらも、より安全な乗車姿勢や、車両の扱い方をレクチャーしているスクールである。障がい者の方々が実際に普段使用している車両を持ち込んで走行できる。また、青木選手は、日産マーチカップ(K12型の3代目マーチによるワンメイクレース)で使われていたカップカーをベースにHDRS用に運転補助装置を装着した車両も用意し、実際にMT車での走行を体験する場も提供する。今回は、青木選手とともに、レーシングドライバーの山田遼選手も講師として参加している。
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猪狩さんが主演を務める映画「リスタート:ランウェイ?エピソード・ゼロ」での青木選手との共演がきっかけ、で今回、猪狩さんがこのスクールに参加することとなった。猪狩さんは事故前にすでに自動車免許は取得していたが、入院中に免許の書き換えを行い、1年ほど前に、今回持ち込んだ愛車のヴィッツを購入している。このヴィッツには、ステアリンググリップで右手でステアリング捜査をし、左手で加減速の操作をする。また移乗用の補助ボードも装着している。
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猪狩さんは「(手の操作だけで)運転できるなんて知らなかった」という猪狩さんだったが、入院中にそのことを知り、電車での移動よりも楽だろうし、便利だろうな、ということで、車両の購入に至った。「今はいつも誰かと一緒に移動していますが、いつかは一人でドライブに行けるようになりたい」と車いすの積み込みの練習も重ねている様子。
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実際にこのHDRSでは、まず、一般道とは異なるサーキットでの走行も見据えた基本レクチャーを受けた後、先導車付きの走行でのコース体験走行を経て、3本のフリーの走行セッションが設けられている。

猪狩さんは積極的に走行をこなし、さらには、自身が使用しているものとは異なる伊・グイドシンプレックス社の運転補助装置の付いたホンダN-ONEに乗車、そして青木選手の運転するマーチ12SRでの同乗走行も体験した。
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実はこの日、手動装置で初めて首都高速を走行し、サーキット入りした猪狩さん。「朝の高速初走行から焦りまくってましたし、このサーキットという場所も初めてで、最初はどうなることかと思っていましたが、すごくいろんなことを体験させてもらいました。サーキットってルールが決まっていてそのうえで安全にすごいスピードで皆さん走っているってことを知りました。こうやって楽しめる環境が作られているんだってことを知れたことは良かったです。また青木選手の横に乗せてもらったんですが、私の知っている『クルマ』ではない動きでした」

初めて尽くしだった一日を笑顔で過ごした猪狩さん。これからも彼女のカーライフが充実していくことに期待したい。

一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が、6月の袖ケ浦、7月の筑波に続き、3度目のパラモトライダー体験走行会を開催した。
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SSPは、レーシングライダーとして世界で活躍した青木三兄弟の長男・青木宣篤選手と3男・治親選手が立ち上げた一般社団法人。青木三兄弟のうちの次男である拓磨選手は、1998年に2輪GPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされて4輪ドライバーに転向している。

その拓磨選手に再びバイクに乗ってもらおうと「Takuma Ride Again」と題したプロジェクトをスタートさせたこの2人が、拓磨選手と同じように、事故などで障がいを抱えてしまって、2輪車を諦めた人に再びオートバイに乗ってもらい、オートバイに乗る趣味を一緒に楽しんで行けるように応援する非営利支援団体である。
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昨年の「Takuma Ride Again」の活動を経て、SSPの第一回目の活動となるパラモトライダー体験走行会が今年6月に初めて開催されている。その初回には、過去にバイクレースの経験もある2名がまずその最初の体験者として選ばれ、これに参加している。

7月には2回目の体験走行会として筑波サーキットに場所を移して開催となった。この日の天候は雨模様だったものの、パラモトライダー初体験2名が加わり、合計3名がバイクを体験した。さらにこの会場には障がいを持つ7名が見学参加。そして、その筑波での見学者を集めての3回目のパラモトライダー体験走行会が、8月21日(金)、第一回目と同じ千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイで開催となった。
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今回も、まずバイクになれるために、補助輪付きの車両で走行練習を行って、その後、全長2.4kmのミニサーキットを走行する。今回は第一回から参加している1名に加え、2名の新規参加者、さらに2名の見学者を集めての開催となった。

今回初参加した野口輝さんは、一般道でバイク乗車時にクルマの飛び出しによる事故で、脊椎損傷(腰椎L2)で2年前から車いす生活となっている。実はこのSSPの一回目の体験走行会から参加している野口忠さんの甥っ子であり、再びバイクに乗りたいと、これに参加している。

そしてもう一人は、前田高豪さん。これまでの参加者と少し異なり、「脳動静脈奇形」という病名で足の自由が効かないという(足の感覚はある)。趣味の二輪レース中にサーキットで発症。車いす生活となってからは、一時神戸ビクトリーに在籍する等車椅子バスケットボールに取り組んでおり、今回たまたま青木拓磨選手のことを調べていてこの体験会を知り参加した。
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本来なら屋外での運動も厳しいという残暑が残るような状況。特に午後には厳しい陽射しが照り付ける中での走行。もちろん、セキュリティスタッフも待機し、参加者はもちろん、スタッフ同士も常に気を配りながらの一日となった。SSPとしては、関係者用休憩スペースとして使用できるよう冷凍庫付きトラックをレンタルして会場に用意。走行を終えた参加者やスタッフが時折トラックに入って体調を整えながらこの日の体験走行を終えた。
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今回も見学者が来場したものの、まだ気軽に当日きてそのままバイクに乗るということはできていない。それは、参加者それぞれの状況が異なっているということで、このSSPの理事も務める理学療法士の時吉直祐さんが希望者の状態をチェックして確認をしてからの参加受理ということになっているからでもある。また、持ち込むバイクの台数、そしてこの活動をサポートするスタッフの数にも限りがあるということで、毎回2~3名ずつでの開催となっている。しかしながら、それでも少しずつ着実に、パラモトライダーの輪は広がってきている。

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