オフィスBMの取材日誌 自動車系物書きのクルマとバイクと…

記者として、カメラマンとして 日々自動車&バイク関連を追いかける、クルマメディア業界の何でも屋・青山義明のブログです。

2018年06月

パイクスピーク初挑戦にして総合2位と4位を獲得!

今回パイクスピーク初参戦でありながら、予選から好タイムをたたき出していた2台も無事にフィニッシュを果たしました。ファッジオーリ・レーシングの2名、#11 シモーネ・ファッジオーリ選手(40歳)は、このチームオーナーです。そしてもう一人のドライバーはスイス出身の#13 ファビエン・ボーダーバン(45歳)という2人です。
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このチームは、ヒルクライムシリーズに現在は5台体制で参戦を続けていて、これまでに10回ヨーロッパのヒルクライム・チャンピオンに輝いています。そんな経歴を持っていて、ヨーロピアンタイトルの次に何をやろうということでターゲットとして定めたのが、このパイクスピークなのだということです。パイクスピークへは昨年視察に来て、参戦を決意。一年をかけてマシンを作ってきた。ヨーロッパのヒルクライムシリーズにはない高山でのレースということで、ずいぶん勝手が違うようです。
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両名ともにパイクスピークは初めてというルーキーです。ボーダーバン選手は、自身が小さいころからアウディの活躍を見て育った、世界でよく知られている有名なレースだったので、このチームに入ったときからパイクスへの挑戦をしようとチームに提言していたようです。実際にパイクスピークのコースを走ってみると、3つのヒルクライムレースを走っているようだといいます。ボトムのテクニカルコース、ミドルのストップアンドゴーのコース、そしてトップのハイスピードコース、とその性格がすべて合わさったのがパイクスピークだというのです。

もちろんチームは「勝ち」に来ていて、シャシーとカラーリング以外はすべてパイクス仕様に変更してきたということです。車両は昨年まで、ロメイン・デュマ選手が使用していたのと同じNorma M20という車体(これは欧州シリーズ参戦と変わらず)。欧州シリーズでは、NAエンジン(ザイテックのV8-3Lエンジンを使用)ですが、今回は、日産の3.7L V6ツインターボ・エンジンをベースにチューンをして700馬力を後輪で発揮します。車重は680kgという超軽量マシンです。
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今シーズンレースウィーク前に開催となった2回のタイヤテストにも参加しています。レースウィークに入り、練習走行では少々エンジントラブルがあったものの、予選から好タイムを出しています。「すべてがうまくいけば、ローブのタイムも抜けるはず」と言っていましたが、実際に決勝レースでは、ファッジオーリ選手が8分37秒230の歴代3位となるタイムでゴール。ボーダーバン選手も9分28秒254で9ミニッツクラブ入りを果たしました。
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ファッジオーリ選手は「タイヤはよかったのに、セットアップが決まらず、そのため十分な性能を出し切れなかった。パイクスピークはとてもハードでエキサイティング。そして素晴らしい世界で一番情熱的なレースだ。来年もっとちゃんとした体制で戻ってこれるように準備を進めたい」とコメント。

来年の挑戦でどこまで記録が伸ばせるか、楽しみに待ちたいと思います。

96回目の開催となった今年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム。総合優勝を果たしたフォルクスワーゲンのI.D.Rパイクスピークばかりが話題になりますが、実はその他にも各種記録が更新されています。
Millen
リース・ミレン選手を起用して初めて参戦をするベントレー・ベンテイガは、ロールケージを組んでいますが、それ以外は市販車+オプション設定のカーボンブレーキとカーボンエアロキットを装着し誰でも同じ仕様の車両が購入できるという仕様で、レンジローバー・スポーツでのSUV最速記録(ポール・ダレンバック/12分35秒61/2013年)を上まわることができるか、という挑戦です。
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すでに練習走行の時点で11分3秒あたりになるだろうというシミュレーションできています。でもミレン選手自身は10分台が狙えるといっていました。そして10分49秒902というパイクスピークエキシビションクラス2位、総合33位のタイムで、見事にSUVクラスのレコードを更新しました。
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また、毎年ホンダR&Dのスタッフを中心に参戦を続けているホンダ社内チームは、アキュラNSX(ジェームス・ロビンソン選手)とアキュラTLX Aスペック(ニック・ロビンソン選手)、そして登場したばかりのアキュラRDX(ジョーダン・ギター選手)で参戦をしました。
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このうちの2台、NSXは、10分02秒448というタイムで、タイムアタック1クラス4位(総合14位)で、ジェームス選手が昨年出した10分03秒433というハイブリッド車最速の記録を更新することとなりました。またTLXはパイクスピークオープンクラス7位(総合32位)に入る10分48秒094を出しました。こちらも駆動別リザルトのフロントホイールドライブ記録10分56秒878(2016年/Robb Holland/アウディTTRS)を上回り記録更新となりました。
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また、社内チームとは別に、ピレリワールドチャレンジに出場しているアキュラTLX GTを持ち込んでいるピーター・カニンガム選手(昨年パイクスピークオープンクラスで9分33秒797のレコードタイムを持つ)が引き続き参戦しました。カニンガム選手はタイム更新をして、自身の記録を書き換えました。

これでアキュラは3つのコースレコードを塗り替えることとなりました。
Donohue
また、タイムアタック1クラスのコースレコード(2013年/ポール・ダレンバック/ヒュンダイ・ジェネシスクーペ/9分46秒001)は、デビッド・ドナヒュー選手が9分37秒152(2017年式ポルシェGT3R)に塗り替えました。
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2輪部門でもパイクスピーク・ミドルウェイト・クラスで、クリス・フィルモア選手が10分04秒038(2018年式KTM 790デューク)のタイムで、昨年のコディ・ヴァショルツ選手の10分34秒967(2016年式ハスクバーナ・スーパーモト)を更新することとなりました。

残念ながら話題のすべてをロメイン・デュマ選手にもっていかれて、ちょっと影が薄いですが、タイム短縮ラッシュな大会だったんですね。

スーパークロスやフリースタイルモトクロスで活躍し、現在はスバルのラリー・ドライバーとしておなじみのアメリカ人ドライバー、トラビス・パストラーナ選手。
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彼も、このパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへの参戦経験のある選手です。これまでの参戦は2004年、2005年にスバルのラリーカーで走っている。当時はまだダート路面が残っており、ラリーカーには、コ・ドライバーの乗車が認められており(コ・ドライバーの乗車が可能だったのは2011年まで)、コースを覚える必要はなかった、と笑いながら話してくれた。
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今回は、ポルシェ・ケイマンGT4クラブスポーツを使用した新しいクラス「Porsche Cayman GT4 Clubsport by Yokohama」が立ち上がり、8台がこのクラスに参戦することとなり、ここにパストラーナ選手(199号車)も参戦です。インディカードライバーのJRヒルデブランド(66号車)やNASCARトラックシリーズや様々なカテゴリーに参戦し、WECの富士戦で日本にやってきたこともあるマイク・スキーン選手(21号車)などもこのクラスに参戦となっています。
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「まずまた戻ってこれてうれしい。残念ながらダートはなくなっていたけれど、ね。今日の走りは、もっと行けるところはあったが、マシンに問題はなかったし、きちんと結果を残せてハッピーだよ」とパストラーナ選手は語ってくれました。
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ちなみに、この新設のクラス。そのタイトルにあるように同じワンメイク車両で、タイヤも横浜ゴムが提供したワンメイクとなります。初代クラス優勝(総合25位)は、トラビス・パストラーナ選手、10分33秒897でした。

現地時間6月24日(日)、96回目となるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)が開催されました。当日の現地の天候は晴れのちヒョウという、これまでもあった大きな天候の崩れもあり、レース自体は全体の5/6を経過したところで一時中断。天候の回復を待ちましたが、すぐに持ち直すことがなかったため、残り1/6の参戦者は、短縮したコースでのヒルクライムを競うこととなりました。
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これまでパイクスピークでは、『10分の壁』と1980年代から幾年にもわたって言われ続けてきました。パイクスピークの10分切りという難しさを象徴する言葉で、それを最初に超えたのが、モンスター田嶋こと田嶋伸博選手が塗り替えた2011年のことです。
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その後、競技区間の全コースが舗装化されると、この大記録がいとも簡単に覆されていきます。特に印象に残っているのが、2013年のセバスチャン・ローブ選手(プジョー・208 T16パイクスピーク)による8分13秒878というタイムです。当時は9分台の争いがようやく勃発してきていたのですが、そこへぶらりとやってきて、とてつもないタイムをたたき出しました。

これにはさすがにまわりも微妙な空気、でした。もう、誰もこのタイムを抜けないのではないか、と。翌年のパイクスピークでは誰もトップタイムのことを言わないという…。
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しかし、その後、9分台の争いもさらに過熱し、9分切りの車両も出てきていました。しかし、ローブの記録から3年、再びレコードブレイカーの1台がやってきたのです。それがフォルクスワーゲンのI.D.Rパイクスピークです。ステアリングを握るのは、これまでパイクスピークで3回優勝を果たしているロメイン・デュマ選手です。
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今年のパイクスピークも2013年の時と同じ雰囲気です。多くのメディアが詰めかけ、デュマ選手だけを追いかけます。決勝レースでも同様で、ドイツへの生放送のため出走時間が遅れたという噂もあったり、まさにデュマ選手のための1日、のようでした。
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そして叩き出されたタイムが、なんと7分57秒148。これまでのレコードから16秒以上も短縮されました。EVがオールオーバーで記録を更新したのは初めてです。現在ホテルの一室でこの記事を作成していますが、ローカル局では朝からこのニュースが繰り返し放送されています。街中が大いに盛り上がったのは間違いありません。

ただ、来年フォルクスワーゲンの出走はあるのでしょうか? 突然8分切りを争う車両が多数参戦するとも考えられません。エントラントの雰囲気はどうなるのでしょうか? 祭りの後の侘しさのようなものが漂うイベントにならないことを祈ります。

第96回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)が、現地時間の6月24日に開催された。パイクスピークは、その第一回目の開催が1916年という、インディ500に次ぐ長い歴史のあるレース。アメリカ・コロラド州にある標高4302mのパイクスピークを舞台に、誰が一番速く走りきることができるかを競うヒルクライムである。

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今年も決勝日の天候は大荒れで、早朝こそ快晴であったものの、午前10時を過ぎると山頂上空には雲がかかり始め、その後は大粒のヒョウと雪が降るというコンディション。そして、朝から強風が吹き荒ぶ厳しい一日となった。

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しかし、午前8時の二輪部門から走行は順調に進み、転倒はいくつかあったものの午前9時半には全18台の二輪部門の決勝レースは全て終了した。2輪総合トップは、カーリン・ダン選手(No.5 2018年式Ducati MTS-1260 Pikes Peak/パイクスピーク・ヘビーウエイト・クラス)の9分59秒102であった。

そして続く四輪部門。注目のフォルクスワーゲンの電気自動車「I.D.Rパイクスピーク」を駈るフランス人ドライバーのロメイン・デュマ選手は、そのトップバッターとして、コースイン。

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この電気自動車は、明らかにこれまでとは次元の異なる速さで山を駆け上がり、チェッカーフラッグを受けた。注目のタイムは、2013年にセバスチャン・ローブが「プジョー208T16パイクスピーク」で出した8分13秒878を大きく上回り、史上初の7分台のタイムである7分57秒148という驚異的なものであった。

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クルマを降りたデュマ選手は「ターゲットタイムとほぼ同じ」とコメントしていることから、フォルクスワーゲンは8分切りが当初からの目標だったのだろう。もちろん、その後に続く車両でこれに対抗できる車両はなく、フォルクスワーゲンは31年ぶりのパイクスピーク参戦で総合優勝をもぎ取ることに成功。ロメイン・デュマ選手は3年連続で「山の男」の称号を得ることとなった。

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レースは、天候の急変もあり、残り13台というところで中断。その最中にも頂上付近は雪が降り積もり、このままレースが続けられないという判断の下、残りの参戦車両については、コースを短縮してのレースということに決定。

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終盤の出走順となっていた日本人ドライバーの小林昭雄選手(No. 249 2000年式ポルシェ911 GT3/Time Attack-Time Attack 1クラス)、奴田原文雄選手(No. 230 2018年式 日産リーフ/Time Attack-Time Attack 1クラス)ともに、ボトムセクションと呼ばれる標高の低いハイスピードセクションのみでの競技となった。

パイクスピーク初参戦の小林選手は「コースが想像以上に危ないし、クルマの出力低下も厳しく、練習ではタイヤが適正温度まで上がらず、と初めてのコースで満足に走れませんでした。決勝の天候の変化についても、これぞパイクスピークなんでしょうが、予選で良いタイム出して早い出走順を得ることが重要だということを理解しました。今回の参戦は自分の実力を出しきれずに不完全燃焼でしたが、レースを終えて帰ってくるときの観客のみなさんの応援は良いものですね。今の気持ちは、また来年も来たいですが……。まず、クルマもドライバーも、レベルアップが必要であり、自分自身、しっかりテーマを持ってスキルアップをしたいと思います」とコメント。

奴田原選手も「不完全燃焼、のひと言です。が、山の天気ですからなす術もありません。リーフのほうは、バッテリーの温度警告が事前に出たものの、冷却もしっかりできて準備万端だったのですが……。決勝の自分の出走時の路面コンディションは、前半がドライなのですが、後半がウエット&濃霧という状況。ADVAN FLEVAのウエットグリップが本領発揮し、ハイパワー車を相手に2番手のタイムも出せました。このウエットのままで山頂まで行ければ……。今回の参戦を応援してくださった皆さん、サポート企業様、チームスタッフ皆さん、ありがとうございました!」と語っててくれた。

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また、今回唯一の日本人ライダーとなった井上哲悟選手は、当初の予定からの予定からスリックタイヤへの変更。さらに燃料の変更と現地での練習走行の度に大幅なセット変更を施し、タイムアップを重ねてきたものの決勝レースではその変更が若干裏目に出てしまい苦戦。ミドルセクションで転倒を喫し、11分34秒021のタイムでパイクスピーク初挑戦を終えている。

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